「棚割りをするのは何故?」
「何のための棚割り?」――作業ではなく、戦略を考える営業になれ

流通営業の現場では、毎日のように「棚割り」という業務が行われます。新製品を導入し、売れていない商品を外す。これは小売業界では当たり前の作業です。
しかし、ある時、新人営業の回答に違和感を覚えたことがあります。
新人営業への質問
「棚割りは何のためにやるのか」と聞きました。
即座に返ってきた答えは「新製品を入れ込むためです」。
では、外す商品はどうやって決めるのか。「売れていない商品を外します」。
売れていない商品の基準は。「POS実績で売上貢献していない商品です」。
ここまでは、流通営業としては標準的な回答です。しかし、私は更に一歩踏み込んで聞きました。
「わかった。では、その商品を外して新製品を入れ込むことで、今まで以上の売上実績が上がる根拠や、見込みを教えてくれないか」
言葉にならない沈黙
その時、新人営業の表情が変わりました。
言葉にはなりませんでしたが、その顔は「そんなことわかりません」と言っていました。
棚割りという業務をこなすことはできる。商品を外して、新製品を入れて、数量を調整する。その一連の作業は完璧にできる。しかし、なぜそれをするのか、本当の目的は何なのか、そしてそれによって何が起こるのかという、戦略的な思考までは至っていなかったのです。
作業と戦略の違い
ここに、流通営業の大きな問題があります。
棚割りは「作業」ではなく「戦略」であるべきです。
作業的な棚割りは、POS実績に基づいて機械的に商品を入れ替える。しかし、戦略的な棚割りは、その小売店の顧客層は誰か、その層がどのような商品を求めているか、新製品を入れることで売場全体の売上がどう変わるか、そして利益構造がどう改善するか、そこまで考えた上で実行するものです。
新人営業は、作業としてのとらえ方しかできていなかったのです。
AIの時代に、営業が失うもの
ここで、一つの不安が頭をよぎります。
AIの台頭によって、営業マンが棚割りを行うという業務も、いずれ無くなってしまうかもしれません。データ分析、売上予測、最適な商品配置の提案――これらはすべて、AIが得意な領域です。
機械的な作業なら、人間はAIに敵いません。
営業が生き残るために
では、営業マンは何をすべきか。
それは、作業としての棚割りから、戦略としての棚割りへシフトすることです。
なぜその商品を外すのか。なぜこの新製品を入れるのか。その結果、売場全体の売上がどう変わるのか。顧客の行動がどう変わるのか。メーカー、卸、小売の各立場で、どのような価値が生まれるのか。
そういった戦略的思考ができる営業だけが、AIと共存できる時代を生き残れるのです。
まとめ:問い続ける勇気
あの新人営業に「その根拠は何か」と聞いたのは、単なる質問ではなく、作業ではなく戦略を考えることの大切さを伝えたかったからです。
棚割りは、誰でもできる作業ではなく、流通構造を理解し、顧客心理を読み、メーカーと小売の関係を調整する、本当の意味での営業戦略なのです。
流通営業として、これからも求められるのは、この戦略的思考ができる人間です。AIの時代だからこそ、人間にしかできない「なぜ」を問い続ける勇気が必要なのです。

